【古雅楽館】アケビ

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山菜と言えば「たらの芽」や「こごみ」等、春先に出回る野生の植物を思い浮かべるが、何も春だけに限った訳ではなく冬を除いて様々な(食べられる)山野草が季節を感じさせてくれる。今では冬でもハウス栽培の「たらの芽」が手に入る時代だが、人工栽培のものは最早『山菜』とは呼べないだろう。それと『笹竹(ささだけ)』や『茸(きのこ)』も広い意味では山菜に含まれるのだろうが、やはり「エノキ」や「マイタケ」等は野菜の部である。「山野に自生し、通常栽培はされず自生している物を採取」したものが『山菜』なのだが、お隣の山形県では商業規模で栽培しているし、『サカタ』や『タキイ』ではかなりの種類を通販しているので野菜との線引きが難しくなった。ここでは「名は知られていても、あまり普及していなくて一般受けしないもの」と勝手に定義付けしておこう。春なら『ヨブスマソウ』、夏は『スベリヒユ』、秋は実物で『ヤマブドウ』や『アケビ』など。

ヨブスマソウ ヤマブドウ

【写真上左】成育したヨブスマソウ、食べられるのは新芽の時。【写真上右】ヤマブドウの果実。大きさは普通の葡萄(ぶどう)よりずっと小さい。(いずれもWikiより転載)

そこで『アケビ』である。↑の『タキイ』でも苗を販売しているが栽培している庭を見たことが無い。つる性なので庭が広くて棚が必要、『自家受粉10』しないため最低二種類植えなけれならない、『うどんこ病11』の防除が必要等、クリアーしなければならない問題があるので初心者には難しいことと、何よりも有用性がそれ程認知されていない点が普及を妨げていると思われる。全国の年間生産量は200tに満たず、その大部分が山形であるというのはさもありなん。

溢れるくらい種類があるスイーツやトロピカルフルーツも珍しくない現代、「アケビの実は甘くて美味しい」と言われたのは昔の話であって、むしろ果肉に含まれる種が余りにも多く、食べるというか「しゃぶる」のに閉口するだろう。実で重要なのは果肉よりも果皮で田舎では昔から秋の食材のひとつだった。「肉詰め」や「炒め物」が ポピュラーだが、それも流通が発達した現在は「どうしても」必要というものでなく、季節を感じる「通向けの」食材という立場にあるので、スーパーへはなかなか出回らなくなってしまった。行きつけの八百屋でも去年までは毎秋買えたのが今年は入荷しないという。理由は聞かなかったが店頭に出しても売れないのが最大の理由であるのは疑う余地が無い。

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【写真】戴いたアケビ、山採りなので大きさやカタチにばらつきがある。左の写真中央のものに果肉が見える。右が小坂峠産で一見するとサツマイモそっくり。

今回はありつけそうもないと諦めていた矢先、偶然にも貰い物で二回立て続けに手に入った。最初はカミさんのトモダチから、次は白石在住の叔父宅へ伺った時お土産に貰ったもので、どちらも山採りの天然物である。後者は小原温泉12の奥、福島との県境小坂峠付近まで行って採ってきたという。見た目と食わず嫌いで家族は誰も食べないに決まっているから、好みの味付けで調理することにした。まさか二回立て続けに貰うとは思ってもみなかったから最初のやつはタイで見かけた『モクベツシ13』の調理を思い出して、豚挽肉と一緒にグリーンカレーペースト炒めにした。カレーペーストはゲーンばかりでなく、炒め物の調味料としてタイでも良く使うので、ワタシの専売特許というワケではない。小原産の物はそれなりの量だったので冷凍も考えサブジ14にした。サブジは弁当のおかずに時々作るのでスパイスはおさおさ怠りない。『クミン15』と『コリアンダー16』のホールをミルで挽き『ターメリック17』と一緒にまぶして蒸煮にする。出来上がり寸前に『ガラムマサラ18』を多目に入れ、最後に塩で調整すればこの間15分程。

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【写真】アケビのグリーンカレーペースト炒め。一緒に豚挽肉とリンゴのスライスも入れ、アケビの苦味にコクと酸味をプラス。盛り付けの皿には藍染を使った方が見栄えがするが、震災で皆割れてしまった。彩(いろどり)に「わさび菜」のみじん切りとありあわせの「カニカマ」をのせると見るからに田舎料理の出来上がり。

それにしても『アケビ』は山菜だけあって「アク」の強さは相当なもの。果肉は切る傍から『褐変19』するし、鉄と反応するのかサブジは中華鍋で調理したら「まっくろくろすけ」に『黒変』 してしまった。そういえば一昨年の春、タイミング良く『アケビの若芽』を手に入れて炒め物した際も「まっくろ」になったしまったのを思い出したが後の祭りである20。味はナカナカであるのだが、これでは何のために『ターメリック』を入れたのか良く分からない。「来年はもっと見栄えのするアケビのサブジを作る」と固くリベンジを誓うワタシなのでありました。あれ、前回と似たフレーズで終わってしまいそうな・・・。

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1.ウコギ科の落葉低木『楤 木=タラノキ』の新芽。最も名の知れた山菜で天ぷらが一番だが、山採りに限る。

2.羊歯(シダ)の一種『草蘇鉄=クサソテツ』 のことでクセが無くアク抜きも不要なので万人向け。あまり知られていないが、「アカコゴミ」とか「オニコゴミ」と呼ばれる種類もあり、採るのが大変なのであまり出回っておらず、値段も多少高め。

3.「エノキ」というと、ひょろ長く白いキノコだと思いがちだが、これは光を当てないで育てた云わば「キノコのモヤシ」で、野生のエノキは似ても似つかぬがっしりした形であり味も全く異なる。

4.なじみ深い「マイタケ」は『菌床(きんしょう)栽培』で大量生産されるが、「椎茸」の栽培に似た『原木栽培』も行われている。この方式は雑菌の防疫管理に手間がかかるため、普通のものより高いが風味は格段に優れている。

5.園芸家なら誰でも知っている、二大種苗メーカー。

6.山形では『クワダイ』、宮城では『ボンナ=ボウナ』の方が通りが良いかも。山地の湿った林に育つキク科の大型草本で成長すると2~3mにもなる。「胡麻和え」や「煮浸し」にするとおいしい。なお『夜衾(ヨブスマ)』とは「コウモリ」のことで、葉の形が翼を広げたコウモリに似ていることからこの名がついた。

7.畑や乾いた土地に育つ山草と言うよりは雑草の類で多肉質の茎をもつ多年生植物。山形では『ヒョウ』、沖縄では『ニンブトゥカー』、タイでは『パック・コム』といい、地中海沿岸でも利用されるくらい普遍的な「野菜」なのだが、意外と知る人は少ない。アクがないので生食もできトルコではサラダの材料に使う。「ポーチュラカ=松葉ボタン」もこの仲間で同様に食べられるが、ωー3脂肪酸(抗うつ作用、コレステロール・中性脂肪の低下、アレルギー症状の緩和に有効、EPAやDHAもその仲間)が多量に含まれることから健康食品として脚光を浴びつつある。

8.山野に自生するつる性植物で、名の通り野生のブドウ。平安時代から果物として、つるは籠(かご)の材料として利用されてきた。 同じ場所に生えていても株により「美味い・不味い」の差が激しく、美味い実のなった株も次の年は味が落ちるなど品質が極端だが、最近品種改良が進み北海道池田町の『ヤマブドウ』ワインが国際コンクールで銀賞を受賞したことがきっかけになり、岩手や山形でも醸造が始まった。ヤマブドウも薬効成分が多く、特に種子や果皮にポリフェノールが大量に含まれていることは特筆に値する。女性にとって関心事である『抗酸化作用』はとりわけ老化防止に効果があり、糖尿病の予防ににも効く。今後大いに注目される食品と言えよう。

9.『木通=通草』、5~10m近くに伸びるつる性植物。アケビの仲間は大きく分けて3種類あり、家庭で栽培するには最低二種類植える必要がある(本文参照)。果実の 薬効は前者程ではないが、同じようにつるは籠や手提げ袋の材料として有用である。最近地方活性化の手段として伝統工芸の復活、推進が各地で行われているが、 『ヤマブドウ』や『アケビ』のバッグは自然回帰派の方々に人気が高い。因みに値段の方は『アケビ』だと2~4万、『ヤマブドウ』はもっと値が張って4~10万位する。

10.学術用語で『自家不和合性』という。被子植物の自家受精を妨げる遺伝的特質で、正常な種子を形成するには他の個体を必要とするため、被子植物が進化・拡散する上で重要な役割を果たしたと見做(みな)される。

11.葉っぱや茎が(うどんの)粉をかけたように白くなる症状で、光合成を妨げるため生育を阻害し開花不良や収穫減に繋がる厄介な病気のひとつ。原因はカビで植物毎に種類が違うため「バラ」のうどんこ病が「胡瓜」に移ることはない。予防が一番で我家では『木酢(もくす)』や『重曹』の希釈液を噴霧して最低限に抑えているもののカンペキには程遠く、『黒星病』と並んでバラ園芸の強敵。

12.宮城県白石市から七ヶ宿町へ向かう途中、白石川沿いに数軒の温泉宿があり、800年前から知られていて江戸時代から昭和にかけ湯治場(とうじば)として栄えた。南端には温水プール施設『スパッシュランド』があり、水泳の合宿で良く利用されている。併設の公園も春は芝桜が楽しめる(【古雅楽館】『マグノリア』参照。但し写真は自動削除されてしまったので再掲します。)

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13.『木鼈子=ナンバンキカラスウリ』インドから東南アジアにかけて分布するつる性植物でテニスボール大の未熟果を『苦瓜』と似た調理方法で利用される。タイでは『ファク・カーオ』という。

14.インド料理のジャンルで野菜の「炒め蒸し」。よく「ドライカレー」と混同されるが全く別物で家庭料理として大変ポピュラーなお惣菜。 日本では「ジャガイモのサブジ」が一番人気か。

15.「セリ科」の一年草で種を香辛料として利用。カレー粉に重要な材料のひとつ。スペイン料理や中東諸国の料理にも広汎(こうはん)に用いられる。

16.同じく「セリ科」の一年草で種はインドやヨーロッパ各国料理で盛んに利用され、生の葉や根はタイ料理に無くてはならないハーブであることは 【古雅楽館】『タイ料理Ⅰ』で書いた。

17.『鬱金=ウコン』ショウガ科の多年草で我国では香辛料としてよりも「沢庵」や「からし」の色づけとして使われてきた。カレー粉の着色料として重要な他、薬効成分が顕著で健康食品業界でも有名。主体はポリフェノールの一種『クルクミン』だがミネラルも豊富で、特に「鉄分」は過剰摂取に注意を促されるほど多く含まれるが料理で使用する程度の量なら問題ない。

18.インド料理に必須のミックス・スパイス。『シナモン』・『クローブ』・『カルダモン』の基本スパイスに各種香辛料をプラスしたもので、市販されている物はメーカーによりスパイスの種類や混合比が異なる。香りが飛びやすいので料理の仕上げ直前に加えるのがコツで、本文と違って一般には少量で事足りる。

19.食品が加工・調理中(場合により保存中も)褐色に変わること。良く知られる例としてジャガイモやリンゴの皮を剥()くと色が変わることが挙げられる。原因は二通りあるが『アケビ』の場合、ポリフェノールの一つ『アントシアニン』が多量に含まれているため酸化の過程で引き起こすものだと思う。まあそれだけ『アントシアニン』が多いという証拠だけど。

20.これも推測であるが、ジャガイモと同じく『アントシアニン』が原因ではないか。後で聞いた話では『アケビの新芽』はやはり「御浸し」が一番とのこと。

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【トップ写真】家の東側は粘土質の堅い地盤に庭木を無理に植えたのが祟(たたっ)て根が地表を這い回り、雑草しか育たない。唯一『彼岸花』だけが初秋に花を咲かせてくれる。

 

 

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