【古雅楽館】 [番外編] 竜飛崎

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毎年お盆の時期になるとカミさんの実家、青森へ墓参を兼ねて帰省するのが習わしとなっている。カミさんの里帰りに付いていくのはアマちゃんの「正宗パパ」的な心情ではあるものの、親戚の方々は義理の兄貴の娘の旦那や子供に至るまで人懐こく親切で、北三陸市の方々と変わらない。自分には親戚縁者が殆どいないので、三世代20人以上が集まった恒例のバーベキューイベントは何よりの楽しみだ。

いつも二泊三日の日程だが折角の青森なので、中日(なかび)は日帰りで県内の名所旧跡を訪ねることにしている。これまで定番、八甲田・十和田をはじめ岩木山や黒石市、田舎館村(いなかだてむら)といった(宮城では)あまり知られていない所へも行ったが、今年は津軽半島竜飛へ足を延ばした。竜飛崎については名の知れた観光地なので、今更どーこーは書かず、ユニークなご夫妻の取材を兼ねたミニフォトアルバムを紹介します。

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【写真左】竜飛埼灯台から展望台を望む。左端が展望台で向かいに公衆トイレ(立派)と駐車場、奥の建物は『ホテル竜飛』。                                      【写真右】右寄りにウインドパークの一部遠望。風力発電の風車が見える。

 竜飛への道はドライブがお薦めで、景色を楽しむなら陸奥湾を見ながら津軽半島を海沿いに走るのが一般的だが、今回は出発が遅かったこともあって、蟹田(かにた)までは国道280号線のバイパスを通り半島中ほどの山道を進む。バイパス路は途中まで北海道新幹線の高架橋と併走し、新たな時代の到来を告げるようだ。山越えして今別に着き、漸く道は津軽海峡沿いに走るようになるが、国道とはいえいきなり道幅が狭くなる。旧三厩(みんまや)村の集落は崖下に残る僅かな平地にくねくね曲がる道路沿いに一軒ずつ並び、絵心があれば何処ででもスケッチしたくなるような風景が続く。

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 【写真左】国道339号線。左奥を曲がると浜通りの終点で、階段国道登り口。黄色の小屋、後手が『太宰治文学碑』。【写真右】逆方向、三厩方面を望む。

実は道幅が狭くなる「竜泊ライン」入口が国道280号線の終点でその先は正式名称の国道339号線になるのだが、終点とは「本州での」という前書が付く。すなわち280号線は海峡を越えて北海道福島町に続くのである。ところが北海道側の280号線は228号線に名を変えその標識はありません。あくまで国土交通省の書類上での話であって、沿線の住民以外知らないと思う。しかもご丁寧に始点である函館から福島町に向かってしばし国道227号線と重複するという三重国道でもあるのだ(!)

  もともと三厩~福島は戦前『青森商船』がフェリーを開設し、戦後「日本列島改造論」華やかなりし頃本州と北海道を結ぶ物流ルートは青函連絡船の他大間と三厩が本州側のゲートとして重要性を帯びていた。しかし航空輸送の発達や青函トンネルの開通でフェリーは1998年に廃止となり、海の上の国道は途絶えてしまった。北海道新幹線開通を2年半後に控え再開する見込みはもうないと思うと、ただの道路とは言え感慨深いものがある。

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【写真左】国道339号線浜通登り口にある案内板。【写真右】路地風景は誰もこの道が国道とは思わない。

さてその先の国道339号線も話題性は十分だ。280号線との境が終点で起点は弘前市、これも280号線と同じく藤崎町までは国道7号線と共有し、五所川原市・中泊町を通って竜飛崎に至る。其処から三厩へ向かうのだが、竜飛崎の折り返し点は高低差が70m近くあり車両の通行は不可能、どうなっているかと言うと崖の上と下をつなぐ道は全国唯一の階段なのでR

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【写真左】階段の始まり。標識が紛れもない国道の証拠印。【写真右】やっと登り切って尾根側の下り口を望む。

階段国道は一時期話題になってTVバラエティ番組にも取り上げられ、レポーターやお笑い芸人がずいぶん来たらしい。早速階段国道を登りました。最初は「ここが国道?」と誰もが思うほど民家の軒先に挟まれた、ありきたりの路地だが家並みを出てからいきなり崖登りになる。この登坂は結構長くかなりしんどい。中程で竜飛漁港を一望出来る開けた場所があるがベンチ等はなく、休まずそのまま急な階段を一気に登って行く。

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展望台と歌碑。『の』の字が刻まれた中央の上が平らな石に赤いボタンがあり、これを押すと『津軽海峡冬景色・第二番』が大音響で流れる。                          観光客がひっきりなしに訪れるので、ほぼエンドレス。

登り切った場所が尾根伝いを走る339号線の端で、石川さゆりの『津軽海峡冬景色』歌謡碑と展望台がある。道路を挟んで向かいが駐車場になっているが入口脇にお土産の移動販売車が停まっており、売っている小母さんは地元というより青森県の有名タレント、水嶋『なつばっぱ』である。何しろ民放は言うに及ばず、NHK(全国放送)だけでも30分ドキュメント番組や『鶴瓶の家族に乾杯』等に何回も出演しているのだ。ただ御本人は至って気さくで、TVに出たことは一切言わず、どこぞの料理屋みたいに有名人の色紙と「テレビに取り上げられました」的張り紙なども一切なく、やたら元気で威勢の良い北三陸市漁業組合海女軍団の一員にしか見えない。竜飛を訪れたブログには名物オバサンとして必ず写真が掲載されるほど。

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もはや名物となった『タッピYA』のオバサン。全身赤づくめの姿もキョーレツだが出てくる言葉も豪快そのもの。

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ゲットしたお土産。【写真上】売れ筋ナンバーワン、『帆立塩焼』。正真正銘陸奥湾産で加工も青森。【写真下左】『焼きミズダコ』。                                      ミズダコは生や『タコしゃぶ』もおいしいが、『焼きダコ』も味が凝縮して酒のつまみに最高。【写真下右】混ぜご飯用『蜆のエキス』。                                         これも写真をクリックして拡大するとお分かりのように純青森産。蜆は十三湖のものか。

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冒頭にかいたユニークなご夫妻とはこの水嶋さんのことで、今回案内してくれた義理のアニキに紹介してもらった。ダンナがまたソノ道では有名人で、普段はマグロを追っかけている漁師だが、津軽海峡のニュース取材やイベントで船をチャーターする時は決まって第一に声をかけられる繰船術の達人だ。特に『津軽海峡横断水泳』のエスコートシップには無くてはならぬ人で、チャレンジャーに必要以上のエネルギー消耗をさせない様、海峡の波や潮流を読みながら巧みに誘導出来るのはこの人を置いて他にいない。昨年47歳にして世界で初めて『世界七大海峡横断』を成し遂げたスティーブン・レッドモンド10や、今月完泳して残すところあと二つとなったアダム・ウオーカー11も口を揃えてキャプテン・ミズシマへ賞賛と感謝の念を述べている。秋冬には『ミズダコ』漁の名人としてNHKの取材を受けたほどの腕をもつ。

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【写真左】水嶋船長と栄光丸。7月にも東京のスイミングチーム6名の海峡南行遠泳完遂をサポートするなど、夏は漁どころでないらしい。                                【写真右】本来は漁船なので集魚灯がぶらさがっているが一球3万円だとか。燃料も高騰しているので漁に出るのも大変だ。奥に見えるのが津軽半島最北端の『帯島』。

訪ねた日は偶々オフで、仕掛けておいた海鞘(ほや)と栄螺(さざえ)の下ごしらえをしながら遠泳や漁の話をしてもらったが、話ついでにそちらも御裾分けに預かった。青森市に戻って夜、酒のお供は勿論これ。海鞘は養殖でない天然物だし、栄螺も殻から身を外してあるのにまだ動いている。 大いに堪能したのは言うまでもない。

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【写真上左】竜飛漁港全景。中央が帯島。【写真上右】船溜まりにいたオオセグロカモメ。人を恐がらず近くに行っても全然逃げない。                               【写真下左】栄螺を捌く水嶋さん。【写真下右】左の方は水嶋御夫妻を紹介してくれた義理の兄貴。水嶋さんの後ではカモメが海鞘や                                栄螺のワタが捨てられるのを待っている。まるでアヒルを飼っているような光景。

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1.この他に下北半島から国道279号線と338号線が海上路として北海道に繋がっている。

2.中泊から竜飛の名をとり本文でも記した『竜泊ライン』と呼ぶが、日本海の海沿いを通るきつい道なので冬季は通行止となる。

3.三厩から竜飛へは339号線とは別に青函トンネルの工事車両用に造られた山上を走る国道281号線(通称あじさいロード)があり、数か所が連絡路で繋がっている。

4.上下間は約390m、362段。

5.本当の話、『夏子』さんといいます。

6.この時水嶋家を訪ねたのは鶴瓶でなくゲストの飯島直子で「あんなきれいなコ、みたことねえ」と仰ってオリマシタ。

7.世界オープンウォーター協会(WOWSA=World  Open  Water  Swmming  Association)が提唱する横断泳のひとつ。『津軽海峡遠泳協会 Tsugaru  Channel  Swimming  Association』のHP参照 詳しくはこちらhttp://www.tsugaruchannelswimming.com/

8.津軽海峡は日本海側から遡上する暖流と太平洋側から流れ下る寒流がぶつかりあい、海面の高度差が日本海と太平洋では1m近くあるのと、海温の差も5℃あって『渦潮=潮目』ができ、且つ潮流の早い所では時速10kmを超える。

9.世界中のオーシャンスイマー憧れの海峡で上記WOWSAが2008年に発表、通称『オーシャンズ・セブン Oceans Seven』という。①アイリッシュ海峡(アイルランド~スコットランド:33.7km) ②クック海峡(ニュージーランド北島~南島:26km) ③モロカイ海峡(ハワイ・オアフ島~モロカイ島:41.8km) ④ドーバー海峡(イギリス~フランス:34km) ⑤カタリーナ海峡(ロスアンゼルス~サンタカタリーナ島:33.7km) ⑥ジブラルタル海峡(スペイン~モロッコ:14.4km) ⑦津軽海峡(19.7km)。

10.4回目のチャレンジにして2012年7月14・15日、ようやく達成したアイルランド出身のスイマー。所要12時間45分。

11.英国人男性として最初、所要15時間31分。どちらもこれだけの時間がかかる最大の要因は潮流に逆らいながら泳がなければならないことで、実際には倍の距離を泳ぐのと同じだという。

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【トップ写真上左】竜飛崎展望台標柱。 【上右】日本の灯台50選にも選ばれた竜飛埼灯台。灯台の表示には旧来から使用の『埼』を使用する。2006年無人化。【下左】太宰治文学碑。小説『津軽』の一文が刻まれている。【下右】道路をはさんで文学碑の向かい側にある『竜飛崎観光案内所(旧奥谷旅館)』。太宰治が『津軽』執筆の際宿泊した旅館で泊まった部屋も復元公開されていて入館無料、冬季は休館。

 

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