【古雅楽館】 四川胡瓜

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古雅楽館幼き頃、夏の日の思い出。ガキ共みんなでセミやトンボを追っかけまわした帰り、農業をしている友達の家に寄って井戸の底に沈んだ籠を手繰(たぐ)り上げると、中には西瓜や胡瓜がごろごろしていた。胡瓜を一本ずつもらい、丸かじりした時のひんやりとした感じが今では懐かしい。

 

その頃、胡瓜・ナス・トマトなどの果菜類は露地植えが当たり前で、夏の食べ物(=夏野菜)と決まっていた。見てくれはどうでも良く、いびつでデカいトマトは熟した赤色とそうでない緑色が入り交じり、特有の匂いがきつくてコドモにとっては決してオイシイ食べ物ではなかった。胡瓜は真直ぐなのはあまりなく、良くて三日月形、大抵は捩れて片一方だけが太っていたり、大きさも皆不揃い。それに「へた」の部分が苦くて、調理の際は切り捨てるのが普通だったが、漬物にすると量が多いのでつい切りそびれた「へた」が紛れ込んで、知らないで食べると口の中全体が苦味にまみれて中々ぬけず、大変な思いをした。

 

やがて時代を経るにしたがって姿・形が良くなり、味も向上して今では年中どこでも買える普通の食材である。現在市場に出回る胡瓜は表面が滑らかで棘が白い『白いぼきゅうり』が主流で、周年栽培され全国生産量の9割を超える。他には『白いぼきゅうり』に押されて生産が激減した『黒いぼきゅうり』、加賀野菜の一つ石川県特産の『加賀太胡瓜』、飲み屋でよく出るミニ胡瓜の『もろきゅう』等があるが、地方特産の胡瓜は今ではごく一部でしか作られておらず、中には絶滅したものもある。反面、消費者の嗜好に対応して年々新品種が発表され、これまでに栽培された品種は国内だけで50種は下らないと思われる。

 

因みに日本の胡瓜総生産量は約57万トンで世界ランキングは11位。県別にみると一位は宮崎県の6万トン超(シェア12・6%)、群馬→埼玉→福島→千葉・・・と続き、宮城県は約1万トンで15位である。世界では一位の中国がダントツで5,432万トン、全世界生産量の76%(!)を占める。以下、トルコ→イラン→ロシア→ウクライナ→スペイン→アメリカ・・・の順でシェアは皆2%かそれ以下だ。

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【写真上左】スリムで沢山の小さなイボとシワが特長の四川胡瓜。【写真上右】歯切れを楽しむのであまり小さく切らない。タテヨコ四等分ぐらいが丁度。味付けは塩だけなのでそれなりに吟味したいが、今回は素直な『ベロ』(KALDIで売っています)を使用した。

話は戻って、中国には古くから栽培されている『四葉系(すうようけい)』という品種がある『白いぼきゅうり』の一種だが、昔ながらの形を留めていてかなり大きくて皺やイボも多く、表皮が柔らかく薄いのが特徴。普通の胡瓜より水分が少なめなので、香りや味が濃く炒め物によく使われる。

 

日本では『四川胡瓜(しせんきゅうり)』という品種がその仲間で、本家より細く中ぐらいの大きさ。歯切れの良さを生かして生食や漬物用に重宝され、「コレでないと駄目」という漬物専門店も多いとかただイボの多さと表皮の薄さが逆にアダとなって、日持ちの悪いのが難点。そのせいでスーパーなどにあまり出回っていないため、この名を知る人は少ない。

 

先だって行きつけの八百屋で久しぶりに『四川胡瓜』を見つけた。全体が「うっすらとした緑」なのは産地が南蔵王だから。山間(やまあい)で育てると白い粉のような『ブルーム』が一層つきやすいのだ。鮮度抜群の証である。早速買い求めて夕食のおかずではなく、酒の肴に・・・。新鮮さを生かすには生食に限るが、多少勿体ぶって塩もみにする。それも通常の「板ずり」ではなく、瓶に入れてカクテルのようにシェイクするだけ。十分ぐらいして塩味が馴染んだら即、食す。パリパリしてみずみずしい食感が何とも言えずおいしい。

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【写真上左】漬物ではなくサラダ感覚、素朴ながらも奥深い味。【写真上右】翌晩のお相手は『グリノールズ』ジンの炭酸割。一晩冷やしたパリパリ感は爽快なジンの味わいと共に絶好の組み合わせ

地元の新聞、「河北新報」によれば県内の主産地は矢本町とのことで8流通期間は長いようだが、蔵王のものは夏の終わりにちょっとだけお目にかかる、移ろう季節の使者である。

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1.旬の収穫時期が春で、夏になると『白いぼ』より味が落ちる(苦味がある)ため、一部地域でしか栽培されていない。

2.実が太くて大きく1kgを超えるのもざら、皮が固いが果肉は柔らかい。煮物や炒め物、肉詰めなどに利用する。

3.特定の品種名ではなく、若どりしたものの総称。本来は胡瓜に「もろみ」を添えた料理名。

4.意外なことに胡瓜の生産量は70年代~80年代にかけてがピークで、100万トンを超えていた。年々作付面積は減少しており、現在は最盛期の半分である。食生活の変化と食材の多様化がもたらしたものだろうか・・・。

5.本葉が四枚ついた頃から実がなり始めることからこの名がついた。

6.Bloom=果粉 果物や果菜の表皮につく白い粉状の物質。身近なものでは『巨峰』の表面についている白いのがそれ。果実の水分蒸発を防ぎ病原体から保護する役目をもつ。人体には無害なのだが一見すると農薬をかけたように誤解する消費者が多く、「ブルームレスキュウリ」も多く作られている。しかし、本来水分の蒸発防止の役割を敢えて除去すれば皮が固くなるのは当然で、味も(古雅楽館には)劣るように感じられ、一度きりしか買ったことがない。

7.果皮をなめらかにして鮮やかな緑に発色させるため、「俎板(まないた)」の上に塩を振ってころがすように塩を擦り込む方法。

8.河北新報夕刊 「食彩マルシェ」 第11回掲載

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【トップ写真】今年もカミさんの故郷青森へ里帰りしました。その際訪れた、弘前市立観光館に常設展示されている『弘前ねぷた』。青森は『ねぶた』で弘前は『ねぷただが、青森県内50カ所以上の市町村で「ねぶた(ねぷた)祭り」が行われており、呼び方はまちまち。「津軽藩」や「南部藩」、造形による区別は関係ないみたい。という事で、次回は昨年に引き続き「津軽紀行」の予定です。

 

 

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